7/10/2006

NYTのランディスの記事

NYTのランディスの記事読みました。衝撃受けました。彼が何故あれほど「言い訳」を毛嫌いしていたかがやっと分かったような気がします。それにしても20ヶ月間、隠し通してきた秘密をなぜ今、公開する決断を下したのか、そのタイミングがナゾです。「皆が集まっている場で堂々と発表したかった」そうですが、もしかしたらこれはCycling.tvのアンソニーおじさん曰く「ブリリアント」な心理作戦では…と勘ぐってしまうのですよ。だって、今年のツールに支障はきたさないはずの疾患ですからね。

7ページもある記事なので、Bicycling.comの記事には含まれていなかった部分だけご紹介します。


· 股関節に激しい痛みを感じ、主治医の診断を受けたのは2004年11月19日。「彼が痛みを訴えたといういことだけで、どれだけ重体かを察した。レントゲンを見た後、あまりのひどさに吐き気がした。」当時、ランディスはフォナックと3年契約を結んだばかり。

· 直ちに調査を始めた。主治医と共に、サイクリング・フォーラムで人工股関節置換手術を受けた後に、レーサーとして復帰した実例を探したり(結果はゼロ)、医学文献を読み漁ったり、チャットルームを片っ端から覗いてみた。その結果の決断:股関節を実験として扱う。1-2年間、このまま自転車に乗り続け、その末に人工股関節置換手術を受ける。 その理由とは、「人工股関節の機能は日常的な生活には適しているし、痛みが無くなることも大きなプラスだった。でもスポーツに関する性能は明らかではない。だから、股関節をポンコツ車みたいに、できるだけ走らせることにした。」

· この秘密を知らされたのは、専属コーチ、専属トレーナー、エージェント、財務アドバイザー、そして数名の友人のみ。「振り返ってみれば、もっと多くの人に知らせても良かったかもしれない。でも不良品扱いされるのは嫌だった。ただ走り続ければ、何とかなると考えていた。」

· 2004年11月22日、減圧術という中世的な姑息的処置を受けた。股関節に十数個の小さな穴を開け、減圧を図ると同時に、血流を促すためであった。松葉杖をつきながら病院を去ったランディスは、健康な右くるぶしに添え木を当てて、引きずっている足について聞かれた場合は、階段でつまづいた、と答えることにしていた。そして2005年シーズンが始まった。

· 一般的な身体検査は大袈裟な過程ではなく、契約どおり走れることが認められさえすればよいといった、標準的なものであった。しかし、サイクリング界に比較的新しいチームであったフォナックは、スイスの誇る徹底さと効率性を披露するべく、接骨検査(つまり足腰の検査)を実施すると発表。「もう駄目だと思った。職探しを始めなきゃと…。」

· 医師はまずランディスの姿勢を眺め、右脚が左脚より5ミリ短いようだと述べた。(実際の差は約15ミリ)。検査台に仰向けになり、医師がランディスの脚を引っ張ったり、回し始めた。ランディスはできるだけ長さが均一になるよう、左足を踏ん張った。「あの医師が何を考えてたのか分かんないけど、当時は手すりがなければ階段を登れないほどの状態だった。」ランディスは合格した。

· 彼が歩くときは片足を引きずる。できるだけ頻繁に座るように心掛け、脚を組むときは常に右足を下に置く。階段は登らずにエレベーターを利用する。ショッピングモールでは駐車係を利用する。勿論走ることはできない。

· 自転車に乗るときは必ず左足を軸にして、右足からペダルに乗せている。そうしなければひっくり返ってしまう。ペダルがトップの位置にある場合、右足では強く踏み込むことができないため、左足でより強く漕ぐことを覚えた。TTバイクに乗る場合は、できるだけシートの前方に座り、胴体と太腿の角度をできるだけ広げるようにした。奇妙なスタイルは他の選手たちの興味を集めたが、そうしなければ股関節は充分に機能できなかった。

· また、痛みを和らげるために、足を開いた状態で歩いていることを隠すために、肩を回しながらの強直性歩行を習得した。レースでランディスの歩き方を見た他の選手たちは、彼のラップスター風の歩き方をからかった。「彼らが思ってたほど、俺はクールじゃなかったってことさ。」とランディスはいたずらっぽく言う。

· 友人たちは暗号を使い始めた。コーチのロビー・ベンチューラは、股関節のことを「フィンガー」と呼び始めた。「おい、痛めた背中の調子どうだよ」と尋ねる友人もいた。

· 肩を痛めながらもトライアスリート選手として活躍した経験を持つ主治医は、股関節の動きの摩擦を利用し、骨と関節がより効率的に作用できるような、溝を作り出すという提案をした。そこで、ランディスは股関節が痛むたびに、関節に溝を刻んでいるのだと考えることにした。

· この秘密は心理的にもプラスとなった。レース中は、選手達の言い訳を頭にインプットした。「誰かが「腹痛がひどい」とか苦情を言えば、「俺がトレーニングを積めばアイツは簡単に負すことができる」と思うようになった。」

· 一流選手では、フットボールと野球を掛け持ちしていたことで有名なボー・ジャクソンが人工股関節置換手術を受けているが、復帰後、彼のスピードは明らかに落ちている。ランディスの整形外科医、デイビッド・チャオは語る。「野球ではスピードが不足していても選手としてやっていけるが、自転車では難しいかもしれない。その一方で、サイクリングは野球やフットボールのような衝撃負荷のあるスポーツではないため、人工股関節が緩むことはない。あと、フロイドがフロイドであるということも大きな強みだ。」

· 今後の予定について:今年のツール期間中に、骨壊死と人工股関節置換手術に関する情報普及などを目的とした、Floyd Landis Foundationという基金を発足する予定である。

· 冗談も忘れない:「そうだ、杖だ!ダイヤモンドを先に取り付けた杖をついて、ツールに出向いて…いや、車椅子の方がいいかな、モーター付の。そいつをスタートラインまで運転してって、自転車に乗り換えるのさ。」

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