USPSの頃のランディスは、ヘルメットとサングラスに隠れた丸い顔(あと上唇にひげの剃り跡)の印象しかなく、丸い顔だから大人しいだろうと決め付けていたのですが、その後のランスとのいざこざ、今年のカリフフォルニア、パリ・ニース、ジョージアでの勝利なども手伝って、あれよあれよと言う間に彼に対する私の中のイメージは塗り替えられていったのです(顔だって丸くないし)。温厚そうなご両親や、インタビューに答える笑顔などのおかげで、「グッドガイ」的な雰囲気は多少残っていたのですが、今回のOutsider誌のこの記事を読む限り、予想以上に頑固な...じゃなくてハードコアな人らしいということが判明。プロのスポーツ選手なので、それは当然かもしれませんが…。
好きなもの:Kid Rock、Ludacris、Mountain Dewソーダ、チェ・ゲバラ、フランク・ザッパ
嫌いなもの:ディスコ、オリバー・ストーンの映画、環状交差点(信号のほうが優れてる)、フランスの建築物、負けたときの言い訳、110%というフレーズ(無意味だから。110%でも112%でも1300%でも同じこと…と理屈をこねるタイプらしい。)
トレーニングとレースに関する方針:頭が転げ落ちたって、脚が吹っ飛ばされたって、そんなことは言い訳にならない。負けは負けでしかない。トレーニングを一番積み重ねたヤツが勝つ。トレーニング中は死にそうになっても、実際に死ぬことはない。相当疲れていたって、もう一回繰り返せるはず。過度なトレーニングなんてのはありえない。つまり、オーバートレーニングというのは、それまでのトレーニングが不足していただけ。ピークに達するのが早すぎるなんてこともない。(ってことは、ドーフィネでは全力出していなかったということですよね。)
生い立ち:厳格なメノナイト派の家族に生まれる。6人兄弟の二人目。1993年にカリフォルニアに引っ越すまで、一般的なアメリカ文化に触れた唯一の経験は、12歳の時に映画「ジョーズ」を観たこと。(メノナイト派はテレビや映画鑑賞を禁じている。他にも、女性は常に頭を隠さなければならなかったり、ダンスなど、神ではなく、自分に栄光をもたらすような行為は一切禁じられている。自転車には乗ってもいいらしい。)15歳の時にマウンテンバイクに乗り始める。当時、自転車選手になることを反対していた父親は、ペンキ塗り、車の修理、汚水処理タンクの清掃などを青年ランディスに命じ、自転車に乗る時間を減らそうとした。それでも夜の2時、3時ごろに乗っていた。
17歳の時にMTBジュニア全国選手権で優勝。その二年後、1993年にカリフフォルニアに移転。1999年にロード選手に転身。2002年にポスタルと契約。(ランスには、そのユーモアとタフさを気に入られる。)2005年シーズンからフォナック所属。ポスタルとの契約を更新しなかったことで、ランスとのいざこざがあったが、ランスの引退を機に問題解消。「あんなケンカは一年で十分さ。レース中はビデオゲームで出てくるキャラクターを片っ端から殺していくような感じで、他の選手と接しているけれど、レースが終わってしまえば、お互い人間同士に戻るんだ。」ランスの努力を目の当たりにしてきたけど、彼の成し遂げたことは実に超人的だった。ランスのやり方を全面的に取り入れようとは思わないけれど、彼から学びたいと思う部分はある。特に、自分が欲しいと思ったものを必ず手に入れてやるぞ、という気力。こういう態度を持つ奴に立ち向かうのは非常に難しい。また、ランスのように怒りを原動力することを学び始めている。
アラン・リム氏とのトレーニングの成果:アシスト時代は着実に山を登りきるディーゼルエンジンのような役目だったが、総合を狙うからにはそれでは不十分。レッドゾーンでの耐久力を養うために、頂上間近で長めのスプリントをする訓練を行なった。そのお陰で5秒間にわたる出力ワット数は去年の900ワットから39%増の1250ワットまで上昇した。
ザブリスキーとの交友関係:ザブはインタビュー中もランディスのソファーに寝転がっていたそうで、2002年以来の友達。時にはルームメイトと化する。ランディスが冗談で送るメールは、奥様やザブからはすぐに反応があるらしいが、ランスからは返信がないらしい。インタビュー中の二人の会話は…ランディスの皮肉っぽい発言を、ザブが意味不明のコメントでフォローするという、漫才にもならない会話が延々と続いていたとか。二人でバイク・ハンドリングの練習をするために、フィールドで自転車に乗りながらアメフト選手の様に体当たりしたり、攻撃を交わしたりする特訓をしたそう。また、山岳トレーニングのコースをランディスに教わったザブ。コースがきつく、相当疲れたことをランディスに電話で伝えたところ、「当たり前だろ。それでいいんだ。」という答えが返ってきたらしい。(とcycling.tvのおじちゃんがEindhovenの時に言ってました。このインタビューがcycling.tvのどこかにあるらしいのですが、見つかりません。)
ジローナ在住の自転車選手の間ではランディスのアパート(家賃月700ドル)の汚さとか、変人ぶりは有名らしい。その他ランディス(とザブ)にまつわる逸話:
• 前輪を取り外し、ウィーリーで乗り続けた
• 航空機搭乗中、ピーナッツを28袋たいらげた
• 靴を拾うために、ダンプスター(ごみ収集箱)に飛び込んだ
• ザブと二人で一度にカプチーノを30杯も飲んだ
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Bicycling誌のインタビューでランディスとバッソの可能性について訪ねられたザブは、バッソは当然有力候補だが、今年最も進歩があったのはランディスだろうと答えている。ちなみに、ヒンカピーはステージレースでリーダーとして走った経験があまりないので、ツールの総合狙いは難しいだろうとのこと。自分が監督だったらダニエルソンを走らせたいとも。
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追記1:ランディスはアーミッシュだとばかり思っていたのですが、ご家族は実はメノナイト派。どちらともペンシルバニア州に多く、スイスを原郷とする再洗礼派。ランディスのニックネームはThe World’s Fastest Mennonite。
追記2:ランディスはメノナイト派の人々の間では非常に多い名前で、彼の出身地であるランキャスター郡の電話帳を見るとランディスという名前が147件も載っているそう。おまけに、Landis Valley、Landisvilleなんて地名もあります。
いまさらですが、現在活躍中の米国サイクリストの苗字はバンデベルデ、ヒンカピー、ザブリスキー、ライプフェマー、ダニエルソン、ジューリック、ロドリゲス...名前だけじゃ国籍が全く分からない。やっぱりアメリカは人種のるつぼなんだなあ。オーストラリア陣はアングロ系の名前ばかりなのに。
9 件のコメント:
こんにちは。didoさん。
大変おもしろい記事でしたので、
私のブログからリンクを貼ってしまいました。
あ、全プレのご応募もありがとうございました♪
>がめんださん、
ご紹介ありがとうございました。こんなへなちょこブログにお越しいただいたとは、まことに光栄でございます!!今年のツールからどんなイラストが生まれるのか、非常に楽しみにしてます。
それでは、今後もどうぞよろしくお願いいたします。
didoさん。
初めまして。Kateと申します。
ザビー(ラストネームなのに愛称で・・・)が好きなへなちょこロード乗りです。
プロローグの日に話題を振りまいたランディスと仲良しさんなんて!!!
何とも楽しくなる情報で嬉しくなりました。
ショックな出来事もありましたが、見始めると夢中になりますよね。
楽しみましょうね。
>kateさん、
ようこそおいでくださいました!
ザブは本当にいい味だしてますよね。私も大好きな選手の一人です。次のTTでもあの美しいフォームでビュンビュン飛ばしてくれることを期待しています。
コメント有難うございました!
なんかblogの内容がそのまま盗用されている気がするんですが・・・
http://9-26.way-nifty.com/livestrong/2006/07/floyd_is_back.html#more
はじまめして。にわかファンですが、mixiで「フロイド・ランディス」コミュニティを作りました。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1141091
ランディスの履歴の記載するとき、参考にさせていただきました。どうもありがとうございました。
>anonymousさん、
ご連絡有難うございます。確かに内容は似ていますが、私の記事もOutside誌をソースとしていますので、同じ雑誌を読まれた方かもしれません。例の記事はウェブでも読めますよ。
>ngsさん、
mixi楽しそうでいいですね。まだ覗いたことがないのですが、何かランディス関係の面白い情報が入ったら是非またご連絡いただけませんか。宜しくお願いします。
>didoさん
コメントお返事ありがとうございました!
まだまだランディスの人となりに関する情報が不足しており、ザッパ信者や強度のコーヒーマニアなどなどの逸話で驚かされているところです!
もしよろしければ、mixiのコミュからdidoさんの記事ページにリンクを貼らせていただけませんでしょうか。信者を増やす一助にしたく…。
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それからサブリスキー、昨年のジロTTでの勝利をフィレンツェで生観戦したので印象深い選手です。その時はまさか彼がこんな面白キャラだとは知りませんでしたが…。
>ngsさん、
お力添えできれば光栄です。ランディスに関する情報はこれからどんどん出てきそうですね。新しい「バイオニック・ヒップ」で来年も根性ある走りを見せて欲しいです。
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